トイレに行く暇もない、病棟看護師のリアルな1日【日勤/午前中編】
「看護師はトイレに行く暇もない」 よく聞く話です。正直、現場に出る前の私は、少し盛っているんだろうと思っていました。
でも本当でした。
この記事では、日勤の午前中にフォーカスしていきます。
「トイレに行く暇もない」は、大げさではありませんでした
結論から言います。 午前中の業務が物理的に詰まりすぎて、少しでも抜ける数分が捻出できないのです。
私が働いていたのは、院内でも一番忙しいとされる病棟でした。
まずは、その「業務の詰まり方」を順番に見ていきます。
病棟の日勤業務は、始業前から始まっている
日勤のシフト定時は8時半から17時です。でも私が病棟に着くのは7時20分ごろ。小学生の娘より先に家を出ていました。
なぜそんなに早いのか。8時半の始業までに、終わらせることが山ほどあるからです。
- その日受け持つ患者さんの情報収集
- 時間内に行う点滴の準備
- 処置や採血があれば、物品をそろえておく
- 退院の人がいれば退院準備
- 初めての処置があるなら、手順を調べておく
受け持ちは6人から8人ほど。先輩とペアの日もあれば、1人で受け持つ日もあります。どちらでも、準備する量は変わりません。
始業前の1時間は、すでに準備ではなく本番でした。 この時間が、よく言う「前残業」です。もちろん残業代は出ません。完全な 「”サービス” ”前” 残業」でした。
9時からの1時間が最初の勝負時間
午前中のスケジュールがどう詰まっているのか、時間で区切って並べていきます。
8時半〜9時
- 朝会と申し送り。夜勤の看護師から、受け持ち患者さんの状態を引き継ぎます。朝会ではチーム全員8人から10人が集まり、情報を共有します。各種カンファレンスもこの時間内に行われます。内容が濃い日は、ここで時間が押すこともありました。
9時〜10時
- 受け持ち全員のバイタルを測り、電子カルテに記録
- 点滴の時間の人には点滴を、処置の必要な人には処置を
- 退院の患者さんがいれば身支度を整え、荷物をまとめる
これを1人ずつ回っていきます。バイタルを測定するだけではなく、患者さんと話し、状態も観察しなければなりません。 受け持ちが8人だとして60分しかないので一人当たり8分弱。 包帯の巻きなおし、傷口のガーゼ交換、喀痰吸引… やるべき処置が多いほど一人8分では回りきれないのです。
10時からは看護師全員で清潔ケアの時間なので
10時までの間にこれらの巡回を終わらせるのが大前提です。
ところが、簡単には進みません。この時間に、こんなことが起きます。
- 患者さんが検査やレントゲンに呼ばれる
- 医師の回診が来れば、その一部始終に付き添う
- 病院内での転棟、受け入れ
検査や回診に付き添っている間は、他の人のバイタル測定回りも点滴開始のセットもやるべき処置もすべて止まります。予定はあっという間に崩れていきました。
10時〜11時
- 看護師全員で、すべての患者さん(50人から60人)の清潔ケア
11時〜12時
やっと一息つけるかも、の時間です。ただし9時から10時のあいだにやり残したバイタル測定回りや処置があれば、ここで行います。加えて次のような対応もこの時間で行います。 そもそもすべてのスケジュールが押しているので、時間が足りないことがほとんどでした。
- 配薬
- 血糖測定、インスリン投与、食前薬投与
- 経管栄養準備
- 患者さんの昼食開始、配膳
- 見守りが必要な患者さんがいれば食事の見守り
11時半〜13時
- 2交代制で1時間の休憩(実質休憩は30分あれば良い方)
- 休憩時間中に翌日の点滴が薬局からあがってくる。仕分けも休憩中に行う
- お昼ご飯は社食まで駆け足で行き、駆け足で歯磨きを済ませて病棟に戻る毎日
座れたのは、ご飯を食べる15分程度だけだったと思います。
そして、このスケジュールにかかわらず、新規の入院患者の受入れ、退院患者の身支度・患者家族への引き渡し、検査対応、急変患者さんの対応、各種処置が随時発生します。もう、毎日が戦場。これ以上忙しい職種ってある? といつも思っていました。
「どれからやればいいの?」多重業務の一例
実際にあった朝の一例をひとつ。
バイタル測定を回っていると、受け持ち患者さんの1人が高熱を出していることに気づきました。急いでドクターに連絡を取り、すぐに採血と採尿の指示が出ます。
しかし私は看護師1年生。手際よくスパっとできればいいのですが、物品を準備するのにも時間がかかります。
検査用の物品を準備している最中に、別の患者さんが予定外の検査に呼ばれました。検査室へはベッドごと移動するので、ポータブルの酸素も必要です。予定外だったため、何も準備をしていない。
加えて、退院予定の患者さんの家族が、お迎えに到着してしまいました。
肝心のバイタル測定回りは、まったく進んでいません。10時のリミットはもう目の前。
こんな日はその後のスケジュールがすべてずれ込み、この時点で残業時間が更に伸びるだろうな、とは容易に想像がつきます。
どれからやればいいの——。こういう場面は、日常茶飯事でした。
こういう状況のとき、ちゃんと見ていてくれている人は、ときどきいます。
そのときは4年目の男性看護師が颯爽と現れました。
採血・採尿でもたついている私に「それやっとくから。検査よばれてるでしょ。検査におろしてきな」
そう言ってくれた姿はまさに神。 今でも忘れられません。
このとき私は、「自分も先輩になったらこういう先輩になる」と強く思いました。
看護師は1年強で辞めてしまったので、自分が「先輩」になることはありませんでした。でもこの思いは、今の職場で実践しています。
なぜトイレに行けないのか。答えは簡単「そんな時間がない」から
ここまで読めば、もう想像がつくと思います。午前中は、始業から(実際は始業1時間前から)、昼休憩までひと息もつけない日がほとんどです。水分補給もできません。
理由は、業務が詰まりすぎていて、物理的に席をはずせないだけです。しかも時間に追われてピリピリしている、更に自分の行動が患者の命に関わるという緊張感をいつも抱えているので、そもそもトイレや水分補給に行きたいとすら感じなくなります。体が緊張で忘れてしまうのだと思います。
今思えば体によくないですが、当時はそれを気にする余裕さえありませんでした。
病棟看護師時代は毎日が戦場でした。でも今の職場では、コーヒーを片手に働いています
あの緊張感で、あの激務。振り返っても、よく頑張っていたなと思います。
今の私は、時間に追われていません。トイレにも自由に行けます。コーヒーやお茶を飲みながら働いています。何より、自分のミスで誰かが亡くなる心配がない。 あのプレッシャーから、完全に解放されました。
あの病棟勤務の経験があったから、今の穏やかさがどれだけありがたいかがわかります。
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これから看護師になるあなたへ
最後に、この記事を読んでくださって不安になっているかもしれないあなたへ。
私がいた病棟は、院内でも一番忙しいとされる場所でした。他の病棟がどんな忙しさなのかはわかりません。
もしあなたが看護学生で、これから実習や職場見学に行く予定なら、ぜひ午前中の時間帯に注目して職場を見てきてください。9時から昼までのあの空気は、就職先を選ぶときの判断材料になると思います。私がいたあの病棟の午前中の時間帯は、毎日本当に戦場のようでした。
覚悟しておくだけで、心の準備はまるで変わります。あなたには、知ってから選んでほしいのです。
ここまでが、病棟日勤の午前中の話です。午後は午後で別の忙しさが待っていました。
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