看護師を1年で辞めた本当の理由|40代で決めた「戦略的撤退」の話
40代で、子育てしながら3年かけて取った看護師資格。それを、私はたった1年で手放しました。
「せっかく頑張ったのに、もったいない」。何度もそう言われました。自分でも、そう思わなかったと言えば嘘になります。
でも今、私はため息ひとつない穏やかな毎日を過ごすことができています。あのとき辞めるという選択をして、それを実行できたから。
今回は、私が看護師を1年で辞めた本当の理由を、当時の気持ちのままお話しします。もし今、同じように苦しんでいる方がいるなら、前向きになれる何かが届けば幸いです。
「決定的な瞬間」はなかった。「無理」が積み重なった
よく「辞めた決め手は何ですか?」と聞かれます。でも私の場合、これという決定的な事件があったわけではありません。
そうではなく、たくさんのことが、じわじわと積み重なっていったのです。
- 勤務体系(夜勤、三交代制、朝残業)
- 人間関係
- 仕事の度を越した忙しさ
- 「お金を稼ぐ手段」としての看護師という職のあり方
- 精神的・肉体的な限界
これらが少しずつ、少しずつ私の中に溜まっていき、ある時から総合的に「もう無理」という領域に入ってしまった。それが正直なところです。
(※一つひとつのエピソードは、それぞれが長くなるので、別の記事で詳しくお話しします。たとえば3交代のキツさは44歳で看護師1年生。3交代制って地獄ですか?で詳しく書いています)
「1年は続けたほうがいい」の呪縛
看護師の世界には、ある共通認識があります。経験を積むほど「使える」ようになり、病棟で3年も働けば、どこでも雇ってもらえるスキルが身につく、というものです。
そんな世界で、私は働き始めて1年も経たないうちに、周囲に「辞めようかな」と話すようになっていました。
すると、みんな口を揃えてこう言うのです。「もったいない」「せめて1年は続けたほうがいい」と。
確かに、また看護師として転職するつもりなら、最低1年は続けたほうがいいのは私も分かっていました。だから歯を食いしばって、なんとか1年は頑張ろうと思ったのです。
ですが辞めること自体に正直揺らいでもいました。嫌な人はいるけれど、せっかく慣れてきた仕事や環境ではある。もっとスキルを磨きたい気持ちもある。なんとか辞めずにすむ方法はないか、とも考えていました。
でも、現実は厳しかった。看護学校時代の友達と、近況報告のランチで息抜きをしていたのですが、その友達も私と同じような状況。ランチの途中で、二人で何度ため息をついたか分かりません。当時は本当に、毎日が絶望しかありませんでした。
師長さんに相談して、突きつけられた現実
夜勤も皆と同じように経験し数ヶ月働いていると、不規則なシフトに心と体がついていかなくなっていました。40年間規則的なスケジュールで生きてきた私にとって、絶対に馴染むことができなかったのが夜勤や、日勤深夜という働き方でした。師長さんに相談すると、意外にもすぐに「夜勤からはずすね、心が元気になるまで」という対応を取ってくださいました。たびたび師長さんとは夜勤について話し合い、二人きりのときに泣いてしまったことも2回ほど。だから師長さんも、私が結構ヤバい状態になりつつあるということは認識していました。そのとき夜勤免除は3ヶ月間と伝えられていました。
夜勤が免除されてから3か月。私は夜勤に戻ることはもう無理だと確信していました。 夜勤ができない=正社員ではいられない=辞めるという選択肢しかない この考えがぐるぐるまわります。
そして再度師長さんと面談。私は、少し期待を持っていました。夜勤ができない旨を伝えれば、雇用形態を変えて職場に残る道を提案してくれるかもしれない、と。だから最初は、相談のような形で「夜勤に戻れない。辞めるしかないと思うのです」と切り出しました。
返ってきた言葉は、こうでした。
「辞めるなら、転職先を決めてから。それまでは続ければ」 「みんな、次が決まってから辞めるんだよ」
そこにあったのは、「異動」でも「雇用形態の変更」でもなく、ただ**「辞めるのなら」という方向性だけ**でした。
このとき、はっきりと悟りました。この職場は、看護師がこういう状況のときに、選択肢を与えてはくれないんだな、と。夜勤ができない看護師は、いらなかったんだと思います。
辞めると決めてから、実際に辞めるまで
皮肉なことに、師長さんの「次が決まってから」という言葉が、私の背中を押しました。「そうか、先に行き先を決めればいいのか」と、転職活動を始めたのです。
動き出すと、意外とスムーズでした。1ヶ月半ほどで、今の職場(事務職)の採用が決まりました。当時2月。3月末での退職を申し出ました。
ところが、ここで初めて引き止めにあいます。看護師不足のご時世、「どうしてもあと1ヶ月、4月末まで」と師長さんに懇願され、結局4月末まで勤めることになりました。
辞めると公表してから、実際に辞めるまでの2ヶ月。みんな知っているはずなのに知らないふり。「辞めるんだよね」と直接言われることはありません。ただ、食堂で後ろの席から「あの人、辞めるんだよ」と——聞こえないように言っているつもりなのか、わざと聞こえるように言っているのか——耳に入ってくることは、たびたびありました。
それでも私は、なるべく平常心でいるようにしていました。むしろ、早く最後の日が来ないかなと、心待ちにしている自分がいました。
辞めた直後、私が感じたこと
そして迎えた、最後の日。
辞めた直後の気持ちは、「やっと終わった」というホッとした気持ちと嬉しさが大半でした。「続けることができなかった」という劣等感も、多少ありました。次の職場が決まっていたので、不安な気持ちは一切ありませんでした。
今、同じように悩んでいるあなたへ
今、私が穏やかな気持ちで、ため息もなく暮らせているのは、間違いなく「辞める」という選択をして、それを実行できたからです。
だから、もしあなたの職場が、ため息ばかり出てしまうような場所なら。私は「戦略的撤退」をおすすめします。さっさと辞めてしまっていいんです。
それに、看護師を完全に辞めないとしても、職場は星の数ほどあります。合わないと思ったら、何度でも転職すればいい。転職先に困らないこと、それこそが看護師という資格の、最大の強みなのですから。
最後に、正直な本音を。今思えば、私の看護師期間は1年1ヶ月。短かったとはいえ、本当は最初に「無理」と思った時点で、辞めてしまっても良かったのかもしれません。あんなに歯を食いしばって頑張らなくても、よかったのかなと。
もしあなたが今、あの頃の私と同じ場所にいるなら。「もったいない」という言葉に縛られすぎないでほしい。あなたの心と体のほうが、資格よりずっと大切です。
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